M&A概要
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略です。前者が「合併」、後者が「買収」という意味ですので、そのまま日本語に
訳すと「企業の合併・買収」となります。 一般に「M&A」という言葉を用いる場合、企業全体の合併・買収(売却)だけで
なく、ある部門だけの譲渡(一部事業譲渡)や、資本提携(100%ではない株の取得・持ち合い)なども含めた、広い意味での
「企業提携」のことを総称しています。
ここでは中小企業のM&Aでよく用いられる4つの形態、
「株式譲渡」「合併」「事業譲渡」「新株引受」について概要をご説明します。
[1]合併「合併」は、複数の会社が合体して1つの会社になることです。
たとえば、同じ業種の企業間で、規模の大きいA社が規模の小さいB社を吸収して1つの会社となるようなケースです。
この場合、A社が存続会社となり、B社の方は消滅(解散)します。これを「吸収合併」と言い、ほとんどの合併はこの形式で
行われています。(別会社を新設して合併する「新設合併」という形式もありますが、手続きが煩雑なことなどから、ほとんど
用いられることがありませんので、ここでは割愛します)
吸収合併では、吸収される側のB社の資産、負債、技術やノウハウ、人材等のすべてをA社が包括的に引き継ぎ、その代わり、
消滅するB社株主には存続会社であるA社株式が交付されます。その際に、様々な角度からAB両社の1株あたりの価値を評価し、
イコールと思われる交換比率で株式を交付します。それが「合併比率」と言われるものです。
例えば、A社の1株価値が1,000円、B社の1株価値が500円だとすれば、B社株式を1,000株所有している株主には、
A社株式500株を交付することになります。
合併は、規模の拡大やスケールメリットを図る際に用いられやすい方法です。
銀行や小売業の大型合併などは、まさにその典型でしょう。ただし、次に述べる株式譲渡に比べると手続きが煩雑なことや、
合併後の社内体制の整備・企業文化の統合などに手間がかかることもあり、中小企業同士の合併は、実はあまり多くありません。
なお、平成18年の会社法施行により、平成19年5月より、合併に際して株式以外の対価も認められるようになりました。
これにより、現金や存続会社の親会社株式を対価として合併することも可能となっています。
[2]株式譲渡「株式譲渡」は、売り手企業が既存の発行済株式を
譲渡することによって、会社の経営権を買い手に譲り渡すものです。
合併と異なり、会社の株主が代わる(所有者が代わる)だけですから、売り手の会社自体はそのまま存続します。株式譲渡は、
合併に比べて手続きが簡単なことから、中小企業においてもよく用いられる、M&Aの中で最も一般的な方法です。
株式譲渡によってM&Aを行う場合、買い手は売り手企業をそっくりそのまま「買う」ことになりますので、
商圏や許認可等を含めた有形無形の資産をスムーズに引き継げるというメリットがあります。
ただし、売り手企業に万一、簿外債務等があった場合は、それらも引き継いでしまうリスクもありますので、買い手はM&Aを
実行する前に十分なチェックを行うことが必要です。
一方、売り手企業側(特に社長)からすれば、これまで心血を注いで育ててきた自分の会社が存続する上、株式譲渡の場合は
株主個人に直接お金が入ってくるので、創業者利益の実現やハッピーリタイヤを行いやすい方法と言えます。
なお、株式の取得割合により株主としての権利が異なることから、どれ位の割合の株式を取得するかは、買い手側にとっては
極めて重要な問題です。詳細は省きますが、一般的には50%超の株式を取得すれば「買収した・子会社にした」ということになり、
3分の2以上の株式を取得すれば、株主総会での特別決議を単独で行えることから、全株取得に近い効果が期待できます。
ただ、実際には、中小企業のM&Aでは100%譲渡(取得)がほとんどです。
[3]事業譲渡「事業譲渡」は、企業が行っている事業(営業資産)そのものを、買い手に譲渡する方法です。一部門だけの譲渡(一部譲渡)も、
すべての事業を譲渡する(全部譲渡)ことも、どちらも可能です。
また、土地・建物等の有形資産や、売掛金・在庫等の流動資産だけでなく、無形資産である営業権や人材、ノウハウ等も譲渡対象と
することができます。事業譲渡は、法人を全て引き継ぐ形ではありませんので、売り手企業の債務(潜在債務を含む)は買い手に
自動的には継承されません。その意味では、簿外債務のリスクを避けたい買い手にとっては安心な方法と言えます。
また、株式譲渡に比べて手続きがやや煩雑になるものの、買い手にとっては欲しい事業、必要な部分だけを手に入れることができる
メリットがあります。
一方で、売り手にしても、不採算部門の売却により、事業の再構築や経営のスリム化を行うことができると共に、売却して得たお金
(会社に入ります)を別事業に投資することができます。
[4]新株引受(第三者割当増資)「新株引受」によるM&Aとは、その名の通り、売り手企業が新株を発行(第三者割当増資)し、それを買い手企業が引き受け、
大株主となることで経営権を取得する方法です。前述した「株式譲渡」とは、既存の株式か新株式かのちがいはありますが、
株式取得によるM&Aという点では同じです。
新株引受は、株式譲渡と異なり、M&Aの対価は株式払込金として会社に入ります。
そのため、この方式は、売り手企業の資本力強化や財務内容の健全化を図るために、しばしば用いられます。
また、既存株式の取得だけでは目標とする株式の保有割合の達成が難しい場合(売り手企業の規模が大きく、株主が分散している
ような場合)などにも用いられます。
買い手側のメリット
[1]既存事業の拡大や事業の多角化ができる
当たり前のことですが、狙いをきちんと絞り込み、自社の経営戦略やニーズにマッチした企業をM&Aで買収することによって、
事業の多角化や弱体部門の強化などを行うことができます。また、業界内での競争が激しい場合、同業種の企業との合併を行えば
規模の拡大が図れ、マーケットシェアを確保することができます。
[2]時間を買うことができる
M&Aを行えば、自社で一から「ヒト・モノ・カネ」を投入して、事業を立ち上げる時間と労力を省くことができ、機動的に
新分野への進出などを行うことができます。
「M&Aは時間を買う」とよく言われますが、これが買い手にとって最大のメリットの1つと言えます。
[3]投資コストが安く、リスクが少ない
M&Aで買収したのと同じ規模の企業や商圏をすべて自前で整えようとすれば、時間ばかりか、はるかに大きなコストがかかる
ことも少なくないことから、M&Aは初期の投資コストが安いというメリットがあります。また、既存企業の買収ということで、
売上・利益などの動向が読みやすいですから、新規立ち上げに比べてリスクが少ないとも言えます。
売り手側のメリット
[1]後継者難対策となり、会社が存続する
後継者難で悩んでいる中堅・中小企業は約6割にものぼると言われています。
後継者が見つからず、廃業・清算ともなれば、せっかくこれまで心血を注いで築いてきた商圏・技術・ノウハウが無になってしまう
ばかりか、従業員の雇用や取引先への影響も深刻です。M&Aで譲渡先が見つかれば、会社は存続して従業員の雇用も継続でき、
そこから新たな発展のための再スタートを切ることができます。
[2]企業体質の強化につながる
M&Aで買い手側に立つ企業は、売り手と比べると経営・財務の基盤がしっかりした大企業・中堅企業が多いものです。
そこで、M&Aで自社よりも大手の企業の傘下に入ることにより、信用力強化や円滑な資金調達、販路の拡大など自社の弱い点を
補うことができ、企業体質の強化につながります。
[3]株主の手取額が多くなる
例えば後継者難で廃業・清算する場合と比較すると、税制の違いにより、会社を譲渡(株式譲渡)する方が一般的に株主の手取額が
多くなります。企業規模や財務内容によって異なりますが、株式譲渡の方が約2倍程度手取額が大きくなります。
勿論、会社が債務超過でないことが前提となりますが、M&Aはハッピーリタイアメントを実現する有力な手段の1つなのです。
債権譲渡登記制度の趣旨
(1) 債権譲渡の対抗要件とは 民法第467条は、債権を譲渡した場合、その 債権の譲受人が債務者に対して自分が債権者であることを主張するためには、
譲渡人から債務者に対して債権譲渡の事実を通知するか,債務者の承諾を得なければならないこととしています。
また,その債権譲渡の事実を債務者以外の第三者,すなわち,債権の二重譲受人,差押債権者,破産管財人などに対して
主張するためには,この債務者への通知又は承諾の手続は,確定日付ある証書によって行わなければならないとしています。
このように,債権譲渡の事実を債務者や第三者に対して主張するための法律要件が債権譲渡の対抗要件といわれるものです。
(2) 債権譲渡登記制度による対抗要件の特例 債権流動化などの目的で、法人が多数の債権を一括して譲渡するような場合には、債務者も多数に及ぶため、
すべての債務者に民法所定の通知などの手続をとらなければならないとすると、手続・費用の面で負担が重く、実務的に対抗要件を
具備することは困難となります。
そこで,債権譲渡の第三者対抗要件に関する民法の特例として,法人がする金銭債権の譲渡等については登記をすることにより
債務者以外の第三者に対する対抗要件を得ることができるとしたものが,債権譲渡登記制度です。
第1 債権譲渡登記制度とは?(3) 登記の対象及び効力 債権譲渡登記の対象は,「法人が行う指名債権(金銭債権)」の譲渡に限定されています。
債権譲渡登記の効果は,債務者以外の第三者との関係で(注),民法上の確定日付ある証書による通知があったものとみなされると
いうものであって,この登記により債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではありません。
債権譲渡登記制度においては,登記の真正を担保するために譲渡人及び譲受人が共同して申請しなければなりませんが、
仮に、譲渡人及び譲受人が通謀して虚偽の登記を申請し,実際に生じていない債権や既に消滅した債権について債権譲渡登記が
された としても、これによって譲渡の対象となった債権の存在が公的に証明されるわけではありません。
(注)債権譲渡登記をしても,債務者に対しては,債権譲渡の事実を主張することはできません。
債務者に対しては、登記をしたことを証する登記事項証明書の交付を伴う通知をしてはじめて、債権譲渡の事実を主張する
ことができるとされています。
(4) 債務者の留意点 債権譲渡の通知を受けた場合、債務者は、以下の点に留意する必要があります。
まず,債権者から債権譲渡の通知を受けた場合又は債権を譲り受けた者から登記事項証明書の交付を伴う債権譲渡通知を受けた場合
においては,債務者は,その後は,債権の譲渡を受けた者を債権者として扱えばよいこととなります。
弁済をした後に通知が到達した ときは、既に債権が消滅していますから,特に対応を要しません。
弁済をする前に同じ債権について競合する内容の通知を二つ以上受けた場合には,
(1)双方の通知が債権譲渡登記の登記事項証明書(後記第3の1参照)を交付してされたものであるときは、
当該証明書に記載された登記の日時により,いずれの登記が先にされたかを確認した上、先にされた登記において
譲受人とされている者を債権者として取り扱うこととなります。
(2)登記事項証明書の交付を伴う通知と民法第467条の確定日付ある証書による通知とが競合した場合は、
登記事項証明書に記載された登記の日時と民法の通知が到達した日時とを比較して、その先後を判断することになります。
* 債権譲渡登記では,「登記の年月日」に加えて「登記の時刻」も記録されるため,登記された時が明確になります。
平成18年改正の経緯債権譲渡制度は、企業の資金調達手段、流動化・証券化手段として着実に社会・経済に浸透している制度ですが、実務上は、
債権を担保目的または流動化・証券化目的で譲渡する手法について、いくつか問題点が指摘されていました。
その中の一つが、「譲渡にかかる債権の債務者が必要的登記事項とされていたため、債務者が特定していない
将来債権を譲渡しても登記をすることができず、債務者が特定していない将来債権を資金調達のために活用する
ことが難しい」というものです。そこで、今般、企業が有する資産を有効に活用し、
更なる資金調達の円滑化・多様化を図るため、債務者が特定していない将来債権の譲渡についても登記によって
第三者に対する対抗要件を備えることが可能となる改正がなされました。
新会社法における会社の種類
合名会社 |
無限責任社員のみで構成/閉鎖的 ※無限責任の社員だけで構成され、原則として社員全員が会社の代表者となる。 |
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合資会社 | 無限責任社員と有限責任社員で構成/閉鎖的 ※無限責任と有限責任の両方の社員で構成される。ただし、有限責任社員は出資に対する利益を 期待するだけの「支援者」の立場にとどまり、事業経営は無限責任社員が担うのが一般的。 |
合同会社 | 有限責任社員のみで構成/閉鎖的 ※出資者の全員が有限責任社員でありながら、株式会社のように「株主総会」や「取締役会」といった 機関設置が不要。 |
株式会社 | 有限責任社員のみで構成/公開的または閉鎖的 ※株式を発行して、一般の人々から資金を募集するなど、大きな資本を集めやすいのが特徴 出資者はすべて有限責任となる。 |
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